福島原発事故を忘れない
能登半島地震の現状を直視し、原子力発電の撤廃を直ちに実現しましょう
13年前の今日、東日本大震災による福島第一原子力発電所過酷事故が起こりました。現地は未だ原子力緊急事態宣言下にあり、事故からの復旧の目処は立っていません。昨年8月には世界中の多くの反対の声を押し切って「アルプス処理水」海洋放出も始まりました。政府、電力会社はメディアと一体となり、「復興」の名のもと、事故や環境汚染の現状について真実を知り、心を開いて語り合う機会を奪い続けています。
そして今年、能登半島で最大震度7を計測する地震が起こり、津波と地殻変動による甚大な被害をもたらしてから2ヶ月が経ちました。北陸電力志賀原子力発電所では、変圧器から2万リットルもの油が漏れ、外部電源の一部が使えなくなるなど、過酷事故発生の危機的状況に陥りました。指定されていた避難ルートが陥没し、避難計画の前提となる原子力災害対策指針の非現実性が明らかとなりました。能登半島北部の地盤は広範囲に隆起し、地形が大きく変わりました。震央は、市民の力によって2003年に原発誘致が凍結された珠洲市でした。そもそも、原子力発電所など決して建ててはならない土地だったのです。
このように今回の地震で、原発事故が日本で再び起こり得たということ、しかも事故が起こっても避難は不可能だったことが明らかになりました。ところが北陸電力は「志賀原発の安全確保に問題はない」との見方を変えません。また関西電力も、まだ余震が続く1月18日、運転開始後47年の老朽原発である美浜原子力発電所3号機を再稼働しました。高浜原子力発電所1号機2号機(ともに稼働50年近い老朽原発)および3号機、大飯原子力発電所3、4号機の稼働を継続しました。政府や電力会社は、再び過酷事故が起き、住民が避難できなくてもかまわないというのでしょうか。私たちは怒りを禁じることができません。
教皇フランシスコは、使徒的勧告『ラウダーテ・デウム−−気候危機について』(2023年10月4日発表)で、「権力者の倫理的退廃」を次のように強く批判しています。
著しい環境変化や高レベルの汚染をもたらすプロジェクトの実施計画の立案時には、想定される地元の発展、経済成長や雇用創出、生活向上の可能性を語り、しかもそれは子どもたちのためだなどといって、地元民に期待を抱かせます。しかし実際のところ本心では、地元民の未来についての関心などないのでしょう。というのも地元民には、そのプロジェクトの後には、生活し栄えていくことが難しい、わびしく、住みにくく、賑わいも、ともに生きる喜びや将来への希望もない、荒らされたままの土地が残されることが、はっきりとは告げられていないからです。加えてその土地は、いずれほかの多くの人たちにも害となる地球規模の損傷を残すことになるのです。(29)
これはまさに、日本で今なお行われている、原発開発による地域社会と地球環境の破壊の姿ではないでしょうか。原発を続けるという選択は、人と人、人と地球の本来の関係を破壊する「権力者の倫理的退廃」を許すことです。私たちは原子力発電に反対します。直ちに原子力発電を撤廃するよう、日本政府、国内電力会社に求めます。
2024年3月11日
日本カトリック正義と平和協議会
会長 ウェイン・バーント
担当司教 エドガル・ガクタン
協議会一同