内閣総理大臣 石破 茂 様

法務大臣 牧原 秀樹 様

SC-JP-d-24-01

2024年10月10日

日本カトリック正義と平和協議会 死刑廃止を求める部会

部会長 竹内 修一 神父(イエズス会司祭)

10月10日の第22回「世界死刑廃止デー」にあたり死刑廃止を求めます

  石破茂様におかれましては、このたび第102代内閣総理大臣に就任されましたことをお慶び申し上げます。
また、牧原秀樹様におかれましては、第109代法務大臣に就任されましたことをお慶び申し上げます。

 あわせまして、私たち日本カトリック正義と平和協議会「死刑廃止を求める部会」は、本日の第22回「世界死刑廃止デー」(World Day against the Death Penalty)にあたり、石破首相・牧原法相ともに、各自の良心に従って誠実に職務を全うされることを、祈り求めます。同時にまた、決して死刑執行を再開することなく、死刑廃止に向けた具体的な取り組みを日本政府として遂行されることを、切に願い求めます。
死刑——それは、国家の名のもとでの殺人の肯定であり、そのことの合法化にほかならない、と私たちは考えています。

 石破首相は、熊本バンドに連なる熱心なキリスト者である、と伺っております。 また牧原法相は、日米の法曹資格をお持ちであると聞き及んでおります。それゆえ、お二人は、理論的にもまた実践的にも、人権擁護や社会正義の実現にあたっては、 必ずやともに、国際的また普遍的な視野からご考察され取り組まれることと理解しています。
しかしながら、牧原法相は、初登庁後の記者会見において、死刑を科すことはやむを得ず、また死刑廃止は適当ではない、と述べられました。このことに対して、私たちはたいへん憂慮しております。ご存知のように、パウロ袴田巖さんの無罪が確定いたしました。しかし、そのために費やされた月日は、58年にも及びます。冤罪—— これが、いったいどれほど一人の人の人生を奪うことになるか、そのことに改めて想像力をはたらかせていただきたいと思います。不確かな人間の判断は、たとえ誠実に行ったとしても、いつも誤り得る可能性を内包しています。
法務大臣としてやるべきこと——それは死刑執行ではなく、むしろ不備だらけの再審制度、被収容者の劣悪な環境・処遇、また多くの過ちを犯した日本の刑事司法の改善のために誠実に向かうことではないでしょうか。

 石破首相は、所信表明において、「守る」という言葉を何度も繰り返されました。さらに、「すべての人に安心と安全を」と訴えられました。今年の死刑廃止デーは、「死刑は誰をも守らない」をテーマとして掲げています。
死刑・死刑制度によって、個人や社会はより安全になる、といった意見があります。しかし、はたしてそうでしょうか。むしろこれは、事実に基づかない誤解ではないでしょうか。換言すれば、「安全保障」という名のもとでの、国家による人権侵害の容認であり、その助長にほかなりません。すべての人のいのちの尊厳を守ること、また社会の安心・安全を保障すること、それによってこそ、私たちは真の幸福な生活を営むことができます。死刑・死刑制度は、その対極に位置します。
 すべてのいのちは、神から与えられた恵みである——もしこのことを、石破首相が心の奥深くで確認されるのならば、「殺してはならない」という神の言葉をどのように受け止められるのでしょうか。国家の名のもとに一人の人のいのちを奪うこと——それは、明らかに神の思いを忘れた人間の驕り以外の何ものでもないのではないでしょうか。

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