内閣総理大臣 安倍 晋三 様

法務大臣   上川 陽子 様

Prot. JP-d 17-03

2017年12 月19 日

 

日本カトリック正義と平和協議会

死刑廃止を求める部会

部会長 ホアン・マシア神父

 

2017年12月19日の死刑執行に対する抗議声明

 

私たち日本カトリック正義と平和協議会「死刑廃止を求める部会」は、世界人権宣言と日本国憲法を尊重する者として、またイエスの愛の教え(福音)を信じ、すべての「命の尊厳」を守るキリスト者として、2017年12月19日に、東京拘置所の松井喜代司さん(69歳)と関光彦さん(44歳)に死刑が執行され、その尊い命が国家の手によって奪われたことに対して強く抗議します。

 

今回の執行によって、安倍晋三政権下では第一次内閣で10名、第二~四次で21名、あわせて31名の大量の人命が処刑されたことになります。上川陽子法務大臣による執行は、今年8月の再任以来初めてですが、2015年6月25日の神田司さんへの執行を含め、これで3名の命を絶ったことになります。

 

今回執行された二人は、ともに再審請求中でした。今年の7月13日に、金田勝年法相(当時)が再審請求中だった西川正勝さんを処刑し、多くの非難を浴びました。にもかかわらず、今回また二人の再審請求中の人を処刑したことにより、司法の独立など関係なく、問答無用で人を殺すという安倍内閣の強固な姿勢を明確にしたといわざるを得ません。上川法相は、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」に関する造詣が深いと自負しているようですが、SDGsのゴール16には「平和と公正をすべての人に」とあり、平和で包摂的な社会の促進や法の支配、司法への平等アクセスが目指されています。その点から見ても、今回の執行は極めて問題です。そもそもSDGsの根本理念である「誰一人取り残さない(no one will be left behind)」の「誰一人」の中に、松井喜代司さんと関光彦さん、そして神田司さんが含まれていないはずがありません。

 

また、関光彦さんは事件当時19歳の未成年でした。少年法の適用年齢引き下げが検討されている中での元少年への死刑執行には、公平性ではなく、強い政治的意図が働いた恐れがあります。「更生の可能性がない」からではなく、死刑によって更生の可能性が決定的かつ不可逆的に断たれてしまうことが問題なのです。いずれにせよ、死刑によっては事件の本質的解決にはつながらず、むしろ国家による新たな殺人を重ねることで、社会に対して残虐な暴力のメッセージを発することになります。私たちは「正義」の名によって行われるこうした殺人を断じて許すことはできませんし、実際の処刑に携わった東京拘置所の職員の苦痛を深く憂慮し、彼らのためにも祈ります。

 

国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏は、世界死刑廃止デーである10月10日に「私はこの野蛮な慣行を続けているすべての国に訴えたいと思います。死刑の執行を停止してください。死刑は21世紀に相応しくありません」と力強く訴えました。その翌日の10月11日、教皇フランシスコは「死刑はそれ自体が福音に反しています」と、死刑廃止を訴えるカトリック教会の姿勢を改めて強調しました。私たちも世界中のそうした声と心を合わせ、死刑執行の即時停止と死刑制度の廃止を訴え続けます。