A. 日本のカトリック教会は、2011年3月の東京電力福島第一原発事故以降、原子力発電の撤廃を日本社会と世界に向かって、積極的に呼びかけています。
たしかに、現在の深刻な地球温暖化問題の大きな原因である二酸化炭素削減の対策は急務であり、原子力発電それ自体は、二酸化炭素を排出しません。しかし二酸化炭素排出問題に関する原子力発電のメリットに対して、万が一過酷事故を起こした場合、その代価があまりにも大きすぎることが、東京電力福島第一原発事故によって、明らかとなりました。
すなわち、万が一原子力発電所で過酷事故が起こった場合、被害地域は半径数10キロメートルの規模で極めて広域に拡がる可能性があり、その住民は、数世代にわたって、憲法25条で保証された、健康で文化的な最低限度の生活をおくるための権利である生存権、人格権を侵害されることになります。被害は健康被害のみならず、それまで気付き上げてきた人間関係、地域コミュニティまでが破壊されてしまいます。
気候変動、地球温暖化の原因である二酸化炭素の削減には、さまざまな方法が講じられるべきで、それは原発の発稼働によってのみ成し遂げられることではありません。しかし、原子力発電所の事故は、ほかに類のない広域性と長期性、それに複雑性をもった被害をもたらすのです。しかも事故は、人間の予測の範囲を超え、いつどのように起こるか予想がつきません。
日本カトリック正義と平和協議会は原子力発電は今すぐに撤廃すべきであると考え、その実現に向け、課題別委員会である「平和のための脱核部会」を組織し、活動しています。
『なぜ教会は社会問題に関わるのかQ and A』👉Q-33
参考文献
リーフレット 小出裕章監修「原子力発電は地球温暖化の切り札ではない」(日本カトリック正義と平和協議会 2010.12)
司教団メッセージ「今すぐ原発の廃止を」(2011.11.8)
司教団メッセージ「原子力発電の撤廃を」(2016.11.11)
『いますぐ原発の廃止をー日本のカトリック教会の問いかけ』(カトリック中央協議会 2016.10)