1985年9月7日
要望書

江東区長
東京区長会会長 小松崎軍次殿

この度、江東区在住のコンスタン・ルイ神父(カトリック潮見教会主任司祭、フランス人宣教師、58才)は「外登法」による指紋押捺を拒否することになりました。
その行動の動機について本人は次のように語っています。「江東区、とくに蟻の町、潮見教会隣接地域には在日韓国人・朝鮮人が多く居住しています。私はこの地域の問題と関わるうちに“外登法”ことに指紋押捺制度と外国人登録証明書の常時携帯義務がいかに多くの人々を苦しめ、泣かせている“悪法”であることを身をもって学びました。……フランス人は、在日韓国・朝鮮人のように差別を受けていないので指紋押捺を差別でないと考えて来たが、そのような考え方が在日韓国・朝鮮人68万人の人々を苦しめ差別をゆるすことであり、ひいては私自身差別を犯すことになることに気付きました。」
私たちは彼の行動をはじめとし、これからも同様に指紋押捺拒否をする一切の在日外国人の行動を心から支援します。
ルイ神父は来日して29年になりますが、今までも日本人が愛される国民となれるように、様々な不正、抑圧、不当な差別をなくそうとして立ち上がっている人々に連帯して行動して来ました。そして今回は、基本的人権の尊重をうたう日本国憲法と国際人権規約に反する「外登法」を根本から改善するように求める運動の中で、指紋押捺拒否をすることになりました。
押捺拒否は、選挙権もなく法を改正する手段を持たない外国人が止むを得ず行うものであり、その責任は未だに法改正を行わない政府と、長年に亙って彼らに屈辱を強いて来た日本社会に求められなければなりません。
私たちは江東区が、人権尊重の立場に立ち、この問題で積極的な役割を果たされるよう次の事を要請します。
1.指紋押捺拒否者の告発を行わないこと
2.指紋押捺拒否者に対する警察の捜査介入に協力しないこと
3.外国人登録法の根本的改正のため、関係機関に働きかけるなど努力すること
イ.指紋押捺制度を廃止すること
口.登録証の常時携帯、提示義務を廃止すること
ハ.外国人登録法違反に対する過重な罰則を廃止すること

日本カトリック正義と平和協議会
外国人登録法問題臨時委員会
事務局長 深水正勝