滞日外国人労働者支援について

 

日本におけるカトリック教会の皆さん ならびにすべての善意の人々へ

滞日外国人労働者支援のヴォランティア活動をしていた福岡市の信者青柳行信さんが、 9月27日「出入国管理及び難民認定法」違反の疑いで逮捕されたことは、わたしたちにとって大きな衝撃であります。事態を深く憂慮したわたしたちは、滞日外国人労働 者支援についてのわたしたちの基本的見解をここに表明し、皆さんのご理解とご協力をお願いしたいと思います。

既に日本カトリック司教協議会の社会司教委員会は、1992年11月『国籍を越えた神の国をめざして』というメッセージを発表し、この課題についての日本におけるカトリック教会の姿勢と方針を明らかにしました。その中で強調しましたように、滞日外 国人労働者は、現代日本社会において、国籍を越えた神の国の到来のしるしとなろうと努めるわたしたちの、キリストにおける兄弟姉妹であります。教皇ヨハネ・パウロⅡ世が断言したように、実際「教会に『異邦人』は存在しません」(1990年「世界移住 の年」のメッセージ)。聖書は次のように教えています。「あなたたちのもとに寄留する者をあなたたちのうちの土地に生まれた者同様に扱い、自分自身のように愛しなさい」 (レビ19・34)。

またイエスは「わたしの兄弟であるこの最も小さな者の一人」が旅をしていたとき、その人に宿を貸したのはイエス自身にしたことであり、しなかったのはイエスにしなかったのであると教えています(マタイ 25・31~46参照) 。 従ってわたしたちキリスト者が、日本に来られた外国人労働者を支援することは極めて当然のことです。

ところでわたしたちが真剣に滞日外国人労働者の支援に取り組もうとするとき、どうしても避けることができない課題は、日本社会の構造や現行法の規制の問題です。どのような社会にも改善すべき点があり、社会は絶えず刷新されなければなりません。この世においてイエス・キリストの神の国の福音に従って生きるべきわたしたちには「この世の秩序を福音の精神で満たし完成する」(第二ヴァチカン公会議『信徒使徒職に関す る教令』5番)という使命が与えられています。 教皇ヨハネ・パウロⅡ世も、日本の司教団にあてたメッセージにおいて「より人間らしい社会の建設において、行動的な役割を引き受けることを恐れてはなりません」と、日本のカトリック信者を激励しました(教皇メッセージ『より人間らしい社会の建設を』)。『国籍を越えた神の国をめざして』はわたしたちが取り組むべき課題を幾つか指摘しておりますが、その中には滞日 外国人労働者の人権の保障という視点から、日本の現行の法律を再検討すべきであるとの指摘も含まれています。 教会はこの世に奉仕するために存在しています。一人ひと りの存在と生命の尊厳をまもり主張することは教会の重大な使命であります。より多くの人々、特にこの問題に公的な責任を担っている方々が、わたしたちカトリック教会の見解を理解され、人権の回復と尊重のために迅速なる措置と対応を取られることを切望します。

1993年10月4日

日本カトリック司教協議会
正義と平和協議会会長 岡田武夫
国際協力委員会委員長 濱尾文郎