内閣総理大臣 小泉純一郎様
法務大臣 森山真弓様
厚生労働大臣 坂口 力様
2001年5月22日
日本カトリック正義と平和協議会
担当司教 大塚喜直
去る5月11日、熊本地裁はハンセン病謝罪・国賠訴訟において、原告全面勝訴の判決を言い渡しました。この判決は「遅くとも昭和35年にはその(らい予防法の「隔離規定」)合理性を支える根拠を全く欠く状況に至っており、その違憲性が明白になった」とし「遅くとも昭和40年以降に新法の隔離規定を改廃しなかった国会議員の立法の不作為につき、国家賠償法上の違憲性及び過失を認めるのが相当である」と認定し、我が国のハンセン病患者に対する政策の誤りを認め、国に対して損害賠償請求を命じるものであり、高く評価されるべきものであります。
今なお患者らの人間としての尊厳は奪われたままであり、日本全国の療養所において四千数百名の元患者が故郷に帰ることもできず、頼るべき家族もなく孤独な状況に置かれています。また、退所している少数の元患者は、医療や生活の保障もなく差別と偏見に恐れながらの厳しい生活を余儀なくされています。今回の判決は、国が長きにわたって行ってきた深刻な人権侵害の責任を改めて明らかにしたものであります。私たちは国がこの判決を厳しく受け止め、控訴を断念し、患者たちに対して謝罪するだけなく、彼らの尊厳の回復と社会における生活を営むための対策を速やかに講じるよう強く要望する次第です。
また今回の判決は、国の責任と共に、宗教者の責任を厳しく問う判決でもあると私たち日本カトリック正義と平和協議会は受け止めます。日本のカトリック教会も他の宗教団体と共に、ハンセン病患者を隔離・絶滅するという国策に協力したことを強く反省し、謝罪いたします。これからは彼らへの人権侵害と差別を根絶するために力を尽くし、ハンセン病問題の全面解決に向けて努力する決意であることをここに表明し、重ねて国が控訴を断念することを要望いたします。
以上