2021年12月21日

内閣総理大臣 岸田 文雄 様
法 務 大 臣  古川 禎久 様

日本カトリック正義と平和協議会
会長 勝谷 太治 司教

2021年12月21日の死刑執行に対する抗議声明

私たち日本カトリック正義と平和協議会は、2021年12月21日に、大阪拘置所の藤城康孝さん(65歳)、東京拘置所の高根沢智明さん(54歳)と小野川光紀さん(44歳)に死刑が執行され、その3名もの尊いいのちが国家の手によって奪われたことに対して、深い哀しみを覚えつつ強く抗議します。

カトリック教会は、イエス・キリストが示した福音の光によって、すべての人のいのちは尊く、たとえどんなに重い罪を犯した人であってもその人格の尊厳は決して失われないと固く信じています。それゆえ、「人格の不可侵性と尊厳への攻撃」である死刑は許容できないという教えのみならず、全世界で死刑が廃止されるために取り組むという決意をはっきりと表明しています(『カトリック教会のカテキズム』2267、ローマ教皇フランシスコの回勅『兄弟の皆さん』263以下参照)。私たちは刑罰制度の厳格な適用により、死刑以外の方法で、犯罪の再発を防止し、社会の安全を確保することが可能になってきた今の時代、人間のいのちの尊さという原点に立って、死刑制度はその存在理由をもはや失ったと考えているのです(日本司教団メッセージ『いのちへのまなざし【増補新版】』79 参照)。

2年以上にわたって世界を覆い、未だ収束の兆しがはっきりと見えないコロナ・パンデミックによって、日本でもこれまでに多くの尊い人命が失われてきました。そして今この瞬間にも、社会の片隅で多くのいのちが危機に瀕しています。そうした中で政府が第一に行うべきは、救えなかったいのちの一つひとつにしっかりと向き合い、心から悼むとともに、すべてのいのちを守るため、困窮する人々を救うために全力を挙げて取り組むことに他なりません。それこそがコロナ禍にあって政府が、そして私たちが果たすべき「責任」であって、死刑執行によって新たな殺人を重ねることでは決してないのです。

いのちの尊さをイエス・キリストから学んだ私たちは、たとえ困難ではあっても、回心とゆるし合い、真の和解へと繋がるための希望を大切に考えています。私たちは教皇フランシスコや全世界のカトリック教会と声を合わせ、また、人権を尊重する世界中の善意の人々と思いを一つにしながら、残酷でいつくしみに欠ける刑罰である死刑の廃止と、それに向けた執行の即時停止を強く訴え続けます。「すべてのいのちを守る」ことこそが、カトリック教会の使命だからです。

PDF版はこちら