死刑廃止を求める部会 Prot. JP-d 23-01
2023年10月10日
第108代 法務大臣 小泉 龍司 様
10月10日の「世界死刑廃止デー」にあたり死刑執行停止を求めます
9月13日に発足した第2次岸田第2次改造内閣において、第108代法務大臣に就任されましたことをお慶び申し上げます。同時にまた、私たちは、本日の第21回「世界死刑廃止デー(World Day Against the Death Penalty)」にあたって、小泉龍司法務大臣が、在任期間中に決して死刑執行の決断をされることのないように、要請いたします。
今年の世界死刑廃止デーがテーマとして掲げている通り、死刑は「不可逆的な拷問」です。日本は、1989年に国連で採択されたいわゆる「死刑廃止条約」には未だ署名・批准していませんが、1984年に採択された「拷問禁止条約」には1999年に加入しています。拷問や残虐で非人道的な刑罰を公然と拒否しておきながら、人の命と尊厳を不可逆的に奪う死刑という刑罰が許されるはずがありません。死刑の残虐性は、執行の瞬間のみならず、死刑囚の処遇に対しても同様です。それは、今月27日に再審公判が開始される確定死刑囚、パウロ袴田巌さんの姿を見ても明らかです。
今年、ノーベル平和賞に選ばれたナルゲス・モハンマディさんは、死刑という究極の人権侵害のあるイランにおいて、人権と自由のために闘っている勇敢な女性です。また、小泉法相が尊敬するマザー・テレサも、1979年にノーベル平和賞を受賞したカトリックの聖人です。彼女はその生涯を、すべての人――生まれる前の胎児から孤独に死にゆく人まで――の命と尊厳を守るために捧げましたが、執行の危機に直面する死刑囚の助命嘆願を熱心に行っていたことでも知られています。今後、法務大臣の職務として死刑執行の判断をする機会が訪れた際には、もしも目の前にマザー・テレサがいたら、何と言うかを想像してみてください。きっと、「殺せ」とは命じないはずです。むしろ、「死ではなく、命を」と言うに違いありません。
カトリック教会は、イエス・キリストが命をかけて私たち人類に伝えてくださった「福音」の教えに照らして、「人間の不可侵性と尊厳への攻撃」である死刑という刑罰を拒否し、世界中から死刑をなくすために働いています。「公平で公正な社会」の実現を自らの政治理念として掲げている小泉法相ならば、必ずや、死刑という不公平で不公正な刑罰に頼ることなく、その職務を全うできると信じ、祈念いたします。死刑を執行しないでください。死ではなく、命を選んでください。
日本カトリック正義と平和協議会
死刑廃止を求める部会
部会長 竹内 修一神父