Prot.no.SC-JP24-01

2024年2月11日

 

内閣総理大臣 岸田文雄様

防衛大臣 木原稔様

「陸上自衛隊による靖国神社集団参拝に抗議し、

政教分離とシビリアンコントロールの原則の堅持を求めます」

 

2024年1月9日、陸上幕僚監部の小林弘樹幕僚副長ら陸上自衛隊員が、事前の実施計画のもと、公用車も使用して集団で靖国神社を参拝しました。参拝者は、陸上幕僚監部の各部担当を通じて一人二千円の玉串料を奉納しており、これは1974年の防衛事務次官通達「宗教的活動について(通達)」(昭和49年11月19日付け 防人1第5091号)に違反する疑いが極めて濃いと思われます。しかしながら防衛省は、1月26日、公用車の使用は不適切としたものの、集団参拝は事務次官通達違反ではなかったとの調査結果を公表しました。また宮古島でも、1月10日に陸上自衛隊隊員約20人が公用車などで地元の宮古神社を参拝したことが報じられています。

同省は、こうした参拝は「毎年の恒例のこと」であり、「全国的な実態調査は行わない」などとしており、さらに木原稔防衛相は1974年の防衛事務次官通達を見直す可能性に言及したとも報道されています。このような政教分離原則遵守への弛緩した態度を看過することはできません。

 

自衛官は、自衛隊法施行規則39条に基づき「日本国憲法及び法令を遵守」し「国民の負託にこたえる」服務にあずかる公務員であり、「国民全体の奉仕者であり、国民の一部に対してのみの奉仕者ではないことを自覚し」「常に公正な職務の執行に当たらなければならない」との「倫理規準」を負う者です。そうした自衛官が、一宗教法人に過ぎないながら、戦前の国家神道との密接なかかわりをもつ「靖国神社」をあたかも公務であるかのように参拝することは、戦後の自衛隊のあり方から逸脱しています。また、参拝を自衛官に強制するのであれば、自衛官個人の信教の自由を侵害することにもつながります。

靖国神社は、戦前、戦中と天皇制軍国主義の精神的支柱としての役割を果たして来ました。「国民主権、人権尊重、平和主義」を柱とする日本国憲法のもとにある自衛隊が、この神社に組織として集団参拝することは、憲法20条に定められた「政教分離」の原則に違反する行為であり、かつ、国家が戦争を美化し、肯定し、国民が再び国家のために犠牲になることを強いる道を開くことにつながりかねません。

 

日本カトリック正義と平和協議会は、政教分離の原則とシビリアンコントロールの堅持を求めます。政府におかれましては、信教の自由と政教分離の原則の重要性を深く認識され、自衛隊員の組織的な集団参拝が再発されることがないよう、善処されることを要望いたします。

 

日本カトリック正義と平和協議会

会長 ウェイン・バーント

担当司教 エドガル・ガクタン

協議会一同

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