Prot. d-JP 14-03

2014829

 

法務大臣 谷垣禎一様

 日本カトリック正義と平和協議会

死刑廃止を求める部会

 部会長 ホアン・マシア神父

 

抗議声明

 

 私たち日本カトリック正義と平和協議会「死刑廃止を求める部会」は、世界人権宣言を支持する立場か ら、またすべての「命の尊厳」を守る宗教者の立場から、本日2014829日、小林光弘さん(仙台拘置支所)と高見澤勤さん(東京拘置所)の尊い命が国家の手によって奪われたことに、強く抗議します。特に、小林死刑囚は裁判で「人の命を奪うために押し入ったのではない」と殺意を一貫して否認していました。死刑が確定した後も再審をくりかえし今月6日、最高裁が3度目の請求を棄却したばかりでした。

 

 私たちはこれまで、死刑の執行停止を繰り返し強く訴えてきました。それは「人間が人間を殺す」死刑は「新たな殺人」であり、社会に暴力的メッセージを発するものであり、死刑制度を利用した犯罪に他ならないからです。しかも犯罪の抑止につながっていません。また、死刑執行による取り返しがつかない最大の悲劇は、誤判による無実の市民の生命と、その誤判を正す可能性を奪ってしまうことです。そして、私たちの社会が、罪を犯した人の悔い改めと償いの機会(再生への道)を助けていく責任を放棄させて、彼らと共に生きる成熟した人間らしい社会を奪うものです。

 

 このような死刑という負の遺産を子どもたちに残してはいけないと強く感じています。私たちは未来ある子どもたちに「いのちの大切さ」を教えなければなりませんが、死刑が制度として存在する社会にあって、どうして「いのちの大切さ」を教えることができるでしょうか?聖書には、罪人が十字架上でイエス・キリストに赦しを求める場面がありますが、人は死にいたる直前まで、神に赦しを求めることの大切さが示されています。それは犯罪者が本当に罪を悔い改め、神の赦しを得ることによって、安らかな死を迎えるためです。国家の手で加害者を殺してしまえば加害者と同じことをすることになります。そのことを認めてしまえば、私たちは若者に命の尊さが教えられなくなり、彼らの内に復讐の精神を育ててしまうことになります。

 

 私たちは、日本政府が、ただちに死刑執行を停止し、死刑廃止に向かっている世界の潮流を国民に公開 し、死刑存廃を考える省内勉強会を復活させ、死刑について、真に開かれた国民的議論が一刻も早く開始さ れることを願って止みません。