外務大臣 玄葉光一郎様

2012年2月2日

日本カトリック正義と平和協議会

事務局長 大倉一美

 

謹啓

 私たちは、世界に広がるカトリック平和運動の国際的ネットワーク、パックス・クリスティ・インターナショナル( Pax Christi International )に所属する日本カトリック正義と平和協議会と申します。私たちは世界の軍縮に多年にわたり尽力してまいりました。今年の国連における武器貿易条約(ATT)準備に向けたプロセスに関して本書状を差し上げたく存じます。兵器の国際的移譲を規制する高度で拘束力ある基準を定める条約と、我が国のその目標への寄与に対し、本書状は強く支持を表わすものです。

 私たちが本状を差し上げるのは、パックス・クリスティ・インターナショナルの日本におけるメンバー団体としてのみならず、世界教会協議会(World Council of Churches)によって招集された、強力で実効性ある武器貿易条約を求めるエキュメニカル・キャンペーン、すなわち諸キリスト教会ならび教会関係団体による国際的なイニシアチブの一環としてでもあります。これには31ヶ国の60ほどの教会および組織が関与しています。

 本状は2012年2月13-17日、国連で開催される武器貿易条約の第4回準備委員会会合協議に関連するものです。

 国際的な武器取引には拘束力ある規制が欠落しており、私たちも、他の多くの人々も強い懸念を抱いています。諸教会、所属教会員ならびに関連団体のこの懸念は本質的に人道主義的なもので、危険にさらされている共同体に向けられています。私たちはあらゆる世界宗教に共通する信念、つまり命は神聖で守られなければならないという信念に導かれています。

 殺傷兵器の不正取引の帰結は、世界の多くの地域で痛感されるところです。武器貿易条約が、そのような暴力行為に使用される武器の供給を削減する上で重要な役割を果たすことを私たちは期待します。

 そのような暴力に苦しむ人々への憂慮の気持ちを、強力で実効性ある武器貿易条約の交渉につなげたいと思います。私たちの第一の関心は、条約の「人間的」領域です。強力なATTには広範な人間的領域が必要です。私たちは条約が次の規定を含むべきであると確信しています。

a) 国際人権法および国際人道法の基準

b) 小型武器、軽火器、銃弾、部分品を含むあらゆる種類の武器を対象とすること

c) 持続可能な開発を危険にさらす武器移譲の否認

d) 女性に対する暴力を存続させる可能性のある武器移譲の否認

e) 被害者支援の必要に対処すること

実効性あるATTには確固たる運用条項が必要であり、報告、説明責任、国際支援のための確実な規定が必要です。

 私たちの目標は、共同体を守り、人々の命を守るための強力な基準と実効性ある実施規定をともに備えたATTです。私たちはこのような目標を、我々の政府であり、国連メンバーである貴殿にお願いしたいと思います。

ATTは国連プロセスが2006年に開始されて以来、大きく進展しています。諸教会にとって主要な達成点は上記に指摘しました。

これまでの成果を持続するためには、条約準備委員会において具体的なアクションを必要とする4つの手続き上の領域があると考えます。パックス・クリスティ・インターナショナルは、エキュメニカル・キャンペーンを強く支持し、以下の点に関して、武器規制連合(Control Arms Coalition)に属する他の市民社会団体--ならびに多くの政府--に賛同しています。

今年これからの交渉で強力な実効性ある武器貿易条約を実現するために、我が国代表が以下の4点を積極的に支持するようお願いいたします。

1)2011年7月14日付議長案ペーパーを2012年7月の交渉の基盤とする

現在のペーパー本文は、強力なATTの基盤となりうるものです。

      私たちは5つの重要な領域を指摘しました(上記のa-e)。さらに必要な改良点として下記を挙げます。

  a) 透明性、記録保持および国際支援規定を強めること

  b) 警察装備、防犯器具を武器ならびに部分品の対象範囲に加えること

 

2)現在の議長であるモリタン・アルゼンチン大使が2012年7月の武器貿易条約国連会議(交渉会議)議長に就任するよう支援する

3)包括的協議後に大多数が合意に達するという国連手続きを用いて、交渉会議の重要な決定がなされることを確認する

そのような手続きを用いるべき重要な決定には下記項目が含まれます。

  a) 議長案からの、または議長案に基づくテクストからの内容削除

  b) 条約の最終稿の採択

4)交渉会議開催中を含むATTプロセスにおいて、オブサーバーとして市民社会団体代表の参加を継続する

    市民社会団体は、無責任な武器貿易によって助長される武器使用暴力行為に苦しむ共同体で活動してい 

    ます。諸教会を含む市民社会は、そのような共同体の代弁者です。市民社会はATTを作成している各国政

    府と、本条約の影響を実際に受ける市民たちを結び付けます。透明で責任ある交渉プロセスには、市民

社会代表が引き続き出席することを必要とします。

 

 私たちは第4回準備委員会の成果とATT交渉会議の準備を見守ってゆく所存です。パックス・クリスティ・インターナショナルの強力な武器貿易条約へのコミットメントと世界教会協議会キャンペーンの一環として、両方の会合にエキュメニカル・キャンペーン代表ならびにパックス・クリスティ・インターナショナル代表が出席します。準備委員会においてこの代表団は私たちがここにまとめた目標を提示し、各国代表団がこれを支持するよう活動してゆきます。私たちはまたこの準備委員会以降、7月の交渉会議の準備段階においてもさらなる接触を期待しています。

 全ての武器移譲の信頼できる規制が緊急に必要なのは、各国政府間で責任を負うべき問題です。殺傷を意図する武器の無責任な取引を終わらせることに結果として成功するなら、人間の命の価値を肯定することになるのです。

 武器貿易条約に関する私たちの要請をお読みいただき感謝申し上げます。こうした懸念にお応えいただけることを心より願っております。

                                                                                                                                      敬白