2020年5月15日
内閣総理大臣
安倍晋三様

日本カトリック正義と平和協議会会長
勝谷太治司教

政府が検察官人事の独立性を脅かすことは、三権分立の原則に反します

私たちは、日本国憲法によって定められる三権分立の原則が、政府が今国会(第201回国会)に提出した検察庁法改正法案を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案によって、大きく損なわれるのではないかと憂慮しています。
なぜなら、同法案がもしそのまま通れば、政府は、政府の一存で、検事総長、次長検事、および検事長の定年延長を決めることができるようになってしまうからです。時の政権が検察官人事を恣意的に運用することになれば、政府の疑惑の追及すらも含む検察庁の職務を歪める恐れが生じます。「準司法官」ともいえる検察官の独立性と政治的中立性が脅かされ、三権分立の原則が大きく損なわれることになるばかりでなく、政権の意向に沿った検察権の乱用により、政治的立場、思想、信仰、信条に対する不当な弾圧が引き起こされる可能性も否定できません。
私たちは、検察官の65歳までの定年延長や役職定年の設定自体に反対しているわけではありません。検察庁法4条には、検察官の刑事事件の公訴、法の正当な適用の請求、裁判の執行・監督、公益の代表としての役割などが明記されています。検察官には同法に則り、市民の権利と民主主義を守るため、正しく任務を遂行されることを望みます。

4月7日、政府は新型コロナウイルス感染症の急速な拡大を踏まえ、「新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言」を発令しました。現在、解除の方向に向かってはいますが、いまもなお国内は「緊急事態宣言」発令下にあり、市民は様々なかたちで経済的困窮、感染の不安に直面し、それぞれが生活と生命の維持で手一杯な状況にあります。このようななかで、三権分立の原則に反する危険のある法案を、5月13日の内閣委員会には法務大臣さえ出席しないまま、国会で採決に持ち込もうとする政府の進め方は、極めて強引と言わざるを得ず、「なぜこのような時に」と、強い疑念と違和感を拭うことができません。

以上、同法案の見直し及び審議の進行の見直しを求め、新型コロナウイルス感染症対策こそ最優先として尽力されることを、強く求めます。

最後に、昨年2019年11月に来日した教皇フランシスコの言葉を引用させていただきます。
「耳を傾けることのできる政治家は、幸いである。」
(「世界平和の日」教皇メッセージ「よい政治は平和に寄与する」2019年1月1日より)

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