1973年10月28日
私たちは靖国神社の国家管理を立法化することに反対します

私たちは、死者への礼をつくし、遺族の人々を理解し資任を有することを忘れませんが、靖国神社国家護持法案について、信教の自由と、宗教団体に対する公費支出を禁じた憲法を侵害する重大な恐れがあるものとして反対いたします。
○私たちはキリストを信じ、愛なる神を信じています。そして神の愛によって生かされている霊と、その不滅を信じています。
○いま日本には、多くの宗教があります。どの宗教にあっても信ずるということは、一人一人の心の深奥から出たものに違いはありません。
○靖国神社、これは間違いなく一つの宗教です。これを国会が多数決で宗教でないと決定すること(法案2条)は、国民一人一人の心の問題に政治権力が介入することにほかなりません。
○靖国神社は宗教を超えた存在であるという意見があります。しかし戦没者の霊を神として祀る靖国神社は、神社神道という宗教以外のなにものでもないと思います。現に靖国神社は宗教法人として存在しています。
○また靖国神社は日本の伝統的習俗であると主張する人がいます。しかし、霊を祀り、霊を慰める儀式は宗教にしかないものです。
○信仰の自由は一人一人の権利であり、憲法によっても保障されています。一つの宗教を法律によって宗教でないとするやり方は、思想や信条の問題を法律によって左右する危険な道につながります。
○国家が信仰の世界に介入し、人の霊の中の、ある霊をすぐれた霊、英霊として決定する権利(法案3条)は全く不当なものです。
○生死の価値規準をどこにおくかは国民一人一人がもつ信仰、思想、信条によって自ら決定するものです。
○私たちは、国家が戦没者を英霊として祀るということの中に、その不当性とともに、戦死を美化し、国民に戦争を肯定させる意図さえ感じます。
○私たちは、一人一人の信仰、思想、信条の自由が尊重される平和な社会をつくっていく義務をもっています。
○私たちは、靖国神社を宗教法人として現在のままにしておくことが望ましいと考えます。
○私たちは、以上の考えから靖国神社国家護持法案は、憲法20条「信教の自由」の規定、89条「公金の宗教団体への支出禁止」の規定にふれるものとして強く反対いたします。

カトリック東京大司教区布教司牧協議会
靖国問題実行委員会