1979年6月29日
要請文 一金大中氏事件に関連して一

内閣総理大臣
大平正芳殿

私ども日本カトリック正義と平和協議会は、昨年10月に京都で開いた全国会議以来、新たな決意と関心とをもって、金大中氏事件と取組んで参りました。
最近の新聞各紙の報道、その他の情報によれば、この事件に対して韓国公権力の関与があったこと、並びに金大中氏の身辺状況が、実質的には完全な原状回復からほど遠いものであることは、も早疑う余地が無いにもかかわらず、先の国会会期中には、ついに国民の期待した納得のゆく対応が見られなかったのは、まことに遺憾であります。
日韓両国の現政権間の深い結びつきを考えれば、既成事実の変更には大きな抵抗がありましょう。しかし、日本国の主権、並びに金大中氏個人の人権、さらには神の前における良心に立ち返って考えれば、現状を放置することは、も早一刻も許されざるものであると存じます。そのことは、総理ご自身も良くご存知のはずではないでしょうか。
私どもは、総理の良心の声が、政治的配慮から来る逡巡に打ち勝ち、総理が勇気ある決断をもって、政治決着の見直しをされることを、強く要請いたします。

日本カトリック正義と平和協議会 担当司教 相馬信夫
会長 森田宗一