1980年10月12日
要請書
―金大中氏および政治犯、良心の囚人について―

関係機関各位

私たちは、広島における第6回日本カトリック正義と平和協議会・全国会議に集まりました。
私たちは、現在、韓国において死刑の判決を受けている金大中氏をはじめとする獄中にいる多くの政治犯、良心の囚人のことを深く憂えています。
私たちは、1978年10月の京都における第4回全国会議において、日本政府が、金大中氏の韓国政府による不法な連行に対して、二度も誤りを犯したことに対し、参加者の賛同を得て同氏の原状回復を強く要請しました。
しかし、原状が回復されないばかりか、同氏は、あいまいな理由によって死刑に処せられようとしています。私たちはこのような事を座視することは、死刑を支えるものと考えます。そこで、微力ながら、同氏の助命を願う署名運動を行い、同氏 をはじめとする良心の囚人の釈放のため祈ってきました。
ところで、韓国政府は、裁判で金大中氏の有罪を法的に立証することに失敗したため、同氏を中傷するという卑劣な行為を行っています。さらに、某新聞社のコラムニストは、同社紙という公けの媒体を通じ、「金大中氏が教会を利用し、「教皇庁が韓国の二大司教に『政府に反対してはいけない』と告げた」と報じています。教会は福音の精神に反したもの、それが政府であってもそれを正していくことを使命としています。
したがって、私たちは次のことを要請します。
1.新聞社は上記の社紙「続模索する韓国」が事実に反する旨の記事と同スペース以上の同社紙の紙面を提供すること
2.日本政府は、三たび誤りを犯すことなく、金大中氏や在日韓国人で韓国で死刑にされようとしている人々が、減刑され、さらに家族のもとに一日も早く帰れるように効果的な努力をすること。
3.韓国政府は、教会に対する弾圧をやめ、「国家保安法」「反共法」「社会安全法」等によって獄中におかれている良心の囚人を今すぐ釈放すること。

日本カトリック正義と平和協議会 第6回全国会議参加者一同
担当司教相馬信夫
会長 森田宗一