1985年12月19日

被差別部落解放のための基本的な法制定の要望

内閣総理大臣
中曽根康弘殿

日本のカトリック教会は、キリストの教えに従い、あらゆる差別のない社会を築こうと努力し、特にいま部落差別問題に取り組むことがキリスト者として欠くことのできない義務であることを自覚しています。
「同和対策事業特別措置法」施行以来16年を経た今日、部落差別問題に向って一定の取り組みがなされたことは評価いたします。しかし、一方、以下のような多くの部落差別の厳しい現実が未解決のまま放置されてきたことも厳然たる事実です。
イ、まだ多くの「同和」地区の人々が低位な生活環境の下に放置されています。
口、部落差別問題に対する啓発活動の必要性が叫ばれながらも充分な成果をあげ得ず、多くの人々が、部落差別問題に対して不十分な認識をもたされたままです。最近では、むしろ部落差別問題解決への取り組みに反対する人も少なくありません。
ハ、部落地名総鑑などの差別図書の出版、購入や、部落差別を助長する身元調査などの差別もなおあとを断ちません。
日本のカトリック教会は、このような基本的人権にもとる部落差別の現状を見過すわけにはいきません。被差別部落解放を目指す啓発と人権擁護の推進を図り、同時に、「同和」地区のいまだに放置されている経済的、文化的、社会的低実態に総合的に取り組むことを法的に支える基本的な法の制定を心から要望いたします。

日本カトリック司教協議会
会長 白柳誠一