1986年10月12日

「指紋押捺問題に理解を」正平協・アピール

信徒の皆さんへ

第12回正義と平和協議会全国会議で、外国人登録法について考えた私たち一同は、信徒の皆さんにこの問題についてより理解していただくために、次のことを呼びかけたいと思います。
1.すでにご存じだろうと思いますが、日本の社会において在日韓国人・朝鮮人の方々は、数多くの差別を受け、長い間苦しんできました。その中でも外国人登録法という法律によって、悪いこともしていないのに自分の意志に反して指紋の押捺を強制されたり、証明書を常に肌身離ず携帯していなければならないことは大きな苦しみです。カトリック教会の中には、この人々と苦しみをともにわかちあい、人々が愛し合いながら生きていく社会をつくるために何人かの外国人司祭、修道者、信徒の方々が指紋を押すことを拒否しています。私たちは、日本人が在日外国人を差別していることを反省するとともに、押捺を拒否している方々がキリスト教の信仰に基づき、「小さな人々」とともに歩んでいこうとしていることを深く心にとめ、 応援していきたいと思います。
2.日本の政府は、指紋押捺を拒否している司祭などに対し、「押捺しないのなら、日本から出て行け」といっています。しかし、押捺拒否に対しては外国人登録法の中で「1年以下の懲役か禁固、または20万円以下の罰金」と定められているだけです。日本から追放するという罰則は、法務大臣が勝手に決めたことであり、法律の中には一言も書いてありません。押捺を拒否する人々に対して政府は、「法律を守れ」と 言いますが、政府自体もこのように法律を犯しているのではないでしょうか。
3.最近の新聞等で中曽根首相が「1回押捺案」を提案したことが報道され、あたかもこれで外国人登録法問題が決着したかのように言われています。しかし、回数が 減っても指紋を押捺すること自体は何ら変わっていないばかりか常時携帯義務制度には一言もふれていません。それどころか、警察などの求めがあればいつでも指紋を押させることができるという制度を新たに付け加えようとしています。政府は、国民や外国に対し、この問題が終わったように見せかけ、運動をつぶそうとしているのです。私たちは、指紋押捺制度と常時携帯義務制度が完全になくならないかぎり、この問題は解決されないと考え、引き続き運動を行っていかなければならないと思います。

日本カトリック正義と平和協議会
第12回全国会議参加者一同