内閣総理大臣

小泉純一郎 様

2001年9月14日

日本カトリック正義と平和協議会

会長 松浦悟郎

 

米国で起きた「無差別殺戮行為」に関する日本政府への申し入れ

 

私たちは去る11日、米国でおきた突然の無差別殺戮行為に対して大きな衝撃を受け、深い悲しみと怒りを感じています。また数千人にも及ぶといわれる犠牲者とそのご遺族、関係者に心からの哀悼の意を表するものです。

世界中を震撼させた今回の暴挙に対してブッシュ大統領は「自由と民主主義」に対する攻撃であり戦争行為であるとみなし、断固とした報復を宣言しました。米国政府ばかりでなく西欧諸国も、このような「テロ」に対する戦いには武力報復しかないと主張しているように見受けられます。また小泉首相も米国への強い支持と協力を宣言しました。さらに自民党は有事法制化の動きを早め、次期臨時国会で自衛隊法の改正を検討していると報道されています。

日本には非戦を誓った日本国憲法があります。今こそ日本国憲法の前文と、特に第九条の精神を遵守することを確約してください。 またこの事件を政治利用して、戦争を準備するための「有事法制」を謀らないことを強く要望します。

私たちは今回のような非道な殺戮行為を絶対に認めることはできません。どんな理由があろうとも、どんな信条によっても、かけがえのない人の命を破壊するいかなる暴力も認めることができません。しかし同時に報復のための暴力もまた容認することはできません。どんな暴力も暴力を防ぐことはできません。そればかりでなく報復は決して平和をもたらさず、かえって新たな報復を呼び起こることになり、世界の平和を危うくし人々を恐怖と不安に陥れることになるだけです。今回のテロが卑劣きわまりない犯罪行為であるからこそ、アメリカと国際社会は同じ殺戮という方法ではなく、法と理性にもとづく平和的方法で解決されるべきであると考えます。

したがって私たちはブッシュ大統領が宣言した報復の為の武力行使を心から憂慮し、また首相がそれを支持し協力を表明されたことに強い懸念を抱いています。中東問題に対して独自で自由な立場で関わることのできる日本には、外交を通して解決を図る大きな役割があります。

平和的な手段によってのみ暴力を防ぐことができることを確信し、いかなる暴力も許さない世界にむけた平和構築の努力を、平和憲法をもつ日本こそが、今行うことであるはずです。首相にはぜひそのイニシャティブをとってくださるよう強く要請いたします。

以上