在日朝鮮人へのいやがらせ、差別事件に関する呼びかけ文

日本カトリック正義と平和協議会
担当司教 松浦悟郎

最近、朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)による日本人拉致事件の報道と共に、日本に住む在日朝鮮人、特に子どもたちに対する陰湿ないやがらせや差別事件が起こってきています。朝鮮学校に通う子ども達が登下校の際、心ない日本人から暴言を浴びせられ、暴行を受けるなどのことが全国各地で起こり、その結果、先生付き添いによる電車での集団下校、チマ・チョゴリ着用自粛など不本意な状況を余儀なくされています。今この日本は、子ども達が白昼でも襲われるのではないかと恐れ、民族の誇りであるチマ・チョゴリを着ると危険であるなどの異常な状況なのです。今までも何かの事件が起こり、共和国が関与しているとの報道がなされる度に、同じようなことが繰り返されてきました。このことは、一部の心ない日本人の問題だけではなく、それを傍観することによって、この暴挙を許し続けてきた私たちの責任でもあるのではないでしょうか。なぜなら、多くの被害者が、いやがらせや暴力を公然とふるわれても、それを止めようとする日本人はほとんどおらず、見てみぬふりをしていたと証言しています。もし、その現場に居合わせた人びとがそれを許さず、みんなで差別と闘う行動が自然に起こるような社会なら、被害を受けた在日朝鮮人の子どもたちも、「多くの仲間がいるからこの国で生きていける」と希望を持つことができるのではないでしょうか。そしてこのことはさまざまな差別を受けている日本人にも、立場の弱い他の外国人にも同じことが言えます。
振り返れば私たちの国は過去において、朝鮮半島を36年間植民地支配しただけでなく、その政策の中で彼らの言葉も名前も文化も奪い、強制連行(拉致)、強制労働、そして戦時性的奴隷制度という恥ずべき過ちをも犯しました。このことに対して少しでも償うことがあるとするなら、植民地支配の結果として日本に住んでいる多くの在日韓国・朝鮮人の民族性と尊厳を守り、心から喜んで共に生きられる社会にすることではないでしょうか。
皆さん、今回のような差別を許さず、「共に生きられる社会」を実現するために、以下のようなことを参考に、個人として、あるいは学校、教会などの単位でもできることを何か具体的に始めてみませんか。
1. もし、差別やいやがらせの現場に直面したら、勇気を持ってそれを許さないという意思表示をするなど何らかの行動を取る。
2. 行動できる人になるためにも、分かち合う場、学ぶ場を家庭や教会で持つ。特に勇気がなかったことも含めて自分の差別、被差別体験を分かち合うことは、意識を深め、意志を強める一歩となる。
3. 今回のさまざまな事件について、自分の地域にある朝鮮学校に連帯と激励の手紙を書く。できるなら、朝鮮学校の子どもたちとの交流を図る。
4. 自分が関係する学校や教育委員会などに、教育の中でこのような問題克服のためのプログラムを実施するように要請する。

2002年11月11日