内閣総理大臣
小泉純一郎様

2003年12月5日

自衛隊のイラク派遣の中止を求める要望書

武力によって平和は生まれません。死と憎しみを増すばかりです。私たちはここで自衛隊の派遣を直ちに中止し、賢明な判断によって武力支配に追随しない国際貢献の道を選択し、実行にうつされるよう強く要望します。

今回のイラク攻撃によって、サダム・フセイン政権は崩壊したものの、戦争の被害はおびただしく、多くの市民が誤爆や戦闘の犠牲になり、国土は破壊され、劣化ウラン弾の後遺症も重なって人々は苦しみのただ中に置かれ続けています。米国による本年5月の戦争終結宣言後も毎日のように戦闘が続き、解決にはほど遠い状態で、第二のベトナム戦争の様相を呈してきました。
一方、今回のイラク攻撃の前提とされていた大量破壊兵器は未だ見つからず、その存在さえも疑問視されています。そればかりか、米英両国主導による戦後統治の状況からも、今回の攻撃が真の平和のためというよりも、石油に絡む利権獲得にあることはいっそう明らかとなっています。
こうした状況の中で日本政府はあくまでも自衛隊を派遣しようとしています。最近の日本政府閣僚の発言にみられる派遣の理由に、「日本が(石油で)中東に依存し国益にかなう」ということがあり、そのことがさかんに強調されています。このような理由で自衛隊を派遣するなら、平和のために貢献できるどころか、イラクにおける戦闘をさらに誘発し、ひいては自衛隊員もイラク市民に絶えず銃を向け、いつかは引き金を引くか殺されるかという状態に追い込まれることが予想されます。
私たちは、国際社会と協力してイラクの復興、平和のために惜しみなく貢献することは当然と考えています。だからこそ、米国の意向に沿った自衛隊派遣ではなく、国連との連携のもとで、平和憲法の精神を活かした日本独自の貢献のあり方を果たすべきです。

イラクに一刻も早い復興と平和が訪れるよう願いつつ、以上のことを強く要望します。

日本カトリック正義と平和協議会
会長 松浦悟郎