内閣総理大臣
小泉純一郎様

10月31日、私たちは26日からイラクで人質として拘束されていた香田証生さんが殺害されたとの報に接し、深い悲しみを覚えます。
香田証生さんのご冥福を心よりお祈り申し上げると共に、ご家族の皆様に哀悼の意をお伝えいたします
私たちはこれまで、多くの市民の声と共に小泉首相に対して「自衛隊の即時撤退」を求めてきましたが、政府は一顧だにせず、結果としてこのような事態を招いたことの責任は重大であり、強く抗議するものであります。どうか自衛隊のイラクから早期撤退の決断をしてください。
すでに国内外を通じて報道されている通り、日本政府が米国のイラク攻撃を賛同した根拠である大量破壊兵器の存在は今や公式に否定されています。もともとその根拠に立った上で、「国際貢献」の名目による米国占領政策に追随する自衛隊派遣が行われてきました。
現在、イラクは暴力の応酬によって混迷を極め、人々は苦しみと悲しみの中に突き落とされています。自衛隊の駐留は、こうした人々に平和をもたらすどころか、この混迷を助長させる原因にもなっています。
去る10月31日(現地時間)に自衛隊駐留地にロケット弾が着弾したことからも明らかであるように、自衛隊がイラクにいること自体、アメリカの軍事行動支援の延長線上にあるために武力攻撃を誘発させていることは明白であります。もはや、サマワは戦闘地域に入っており、何よりも自衛隊の駐留が「イラクの平和と安定」にならないことも明らかですし、このまま行けば、いつか自衛隊がイラクの人々に銃を発砲する事態が起こり、双方に死者がでることも予想されます。自衛隊は人道援助のために結成され、訓練された部隊ではありません。日本が真にイラクの平和のために人道援助をするというならば、自衛隊でなく、他のさまざまな方法を用いるべきです。日本にもイラクの子どもたちのため、また困窮の中にある人々のために何かしようとしている人々は多くいます。このような人々の存在こそ平和憲法の精神から生まれてくる実りであり、政府はこの人々を支え、自らも国際社会の中で武力によらない平和実現のために尽くすことこそ使命ではないでしょうか。

私たちは再度、香田証生さんの悲劇を繰り返さぬよう自衛隊の即時撤退を強く求めるとともに、イラクにおける真の平和のために政府が強い決意を持って平和憲法の精神に従った最大の援助、協力をするよう求めます。

「平和を求める心からの願いこそが、平和を妨げるあらゆる障害を取り除くという、断固とした決意とならなければならない」(ローマ教皇『世界平和の日メッセージ』1997年)

2004年11月2日
日本カトリック正義と平和協議会
会長 松浦悟郎