2005年8月8日
兵庫県宝塚市
教育委員会 学校教育長様
日本カトリック正義と平和協議会
事務局長  長澤正隆

「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書の不採択のお願い

中学校2006年度版の中学校教科書の選定作業が進められ、「新しい歴史教育をつくる会」の教科書が栃木県大田原市で採択されてしまいました。

各種の報道によれば、この教科書は国内外から強く批判されています。日本の侵略と植民地支配の歴史を肯定し、天皇制を賛美するかのような内容を多くふくんでいるといわれているのです。
さきの戦争での原爆の悲惨さを書かれていないことをからも、戦争は悲惨であるということを教えず、戦争時にはよく働いたなどと賛美し書かれているといわれています。
韓国にたいする植民地支配を正当化し、韓国や中国を蔑視しているかのようでもあります。また戦争を推進した大日本帝国憲法を賞賛し主権在民から、国民の義務を押しつける憲法にしようとしているのです。
憲法9条についても国防優先の考え方を優先させているといわれ、戦争に協力する国民をつくる目的でもあるとうかがえられます。

このような教科書が採択されることは、東アジアにおいて共通した歴史観ができず孤立した国家となること。
特に若者においては、アジアの仲間との間では知らないですまされない状況になると推察されます。

故ヨハネ・パウロ二世は1981年広島での「平和アピール」をおこない、「過去を振り返ることは、将来に対する責任をになうことです」といわれました。
過去の東アジアへの侵略と戦争の歴史的事実を真摯に受け止め、反省し、さらに加害者は加害の事実を忘れることは簡単かもしれませんが、被害者は受けた痛みは忘れることは容易ではありません。

戦後60年の今年、日本カトリック教会は平和メッセージ「非暴力による平和への道を」を発表しました。「教会は東アジアの人々の信頼を回復し、連帯して平和を築いていくためにも、私たちはこれらの確固たる姿勢を示すことが必要ではないでしょうか。」と表明しました。
これらのアジアの国々との和解と連帯のために過去に対しての歴史の痛みは、被害者の立場に立って連帯していかねばなりません。
「つくる会」の歴史観は、被害者としてのアジアの人々の願いを踏みにじるもので、その歴史観によって歪曲された教科書を私たちは到底認めることができません。
このような教科書を採択しないように強く要請いたします。
以上