2005年10月18日

内閣総理大臣
小泉純一郎 様
日本カトリック正義と平和協議会
会長 松浦悟郎

靖国神社参拝の強行に抗議します

私たち日本カトリック正義と平和協議会は、我が国がかつてアジア諸国に対して犯した侵略戦争の重さを悔い改めて、平和主義、国民主権、基本的人権の尊重の上に立ち友好と互いの発展を願ってきました。
しかし、小泉首相は2005年10月17日の朝、私たちの思いを踏みにじるように靖国神社への参拝を強行しました。私たちは、以下の理由により小泉首相に厳しく抗議をします。

大阪高等裁判所は9月30日、小泉首相の靖国神社参拝について参拝を「公的」とした上で「憲法の禁止する宗教的活動に当たる」として違憲としました。
判決は参拝に対する小泉首相の姿勢について「政教分離原則が論議されている中で、公に明確にすべきだ」「国が靖国神社を特別に支援している印象を与え、特定宗教を助長している」として、政教分離を戒めた憲法二十条が禁じている宗教的活動に当たるとしました。このようなはっきりした違憲判決にもかかわらず参拝を強行しました。

靖国神社は、戦前、戦中と天皇制軍国主義の精神的支柱の役割を果たしてきたのであり、ここに首相が参拝するということは、戦争を美化し、60年前の戦争を肯定する行為とみなされるものです。現在、憲法九条を変え、戦争できる国になろうとしている試みは、政教分離を定めた憲法二十条をも変え、靖国参拝を恒常化することで「国のために」死ぬことを再び美化することと連動しています。このことは、首相は自ら「二度と戦争を起こしてはいけない」という言葉とはまったく逆行するものです。この参拝が意味することは、国民に国家のために犠牲になることを強いる道を開くものに他なりません。

今回の小泉首相の靖国神社参拝は、日中戦争、アジア・太平洋戦争で亡くなられた二千万人を越す人々と、今も心身ともに被害の苦しみから解放されない人々の心を踏みにじるものです。さらに、小泉首相の靖国参拝はアジアの周辺国に不信感を抱かせるだけでなく、これまで和解と平和を願って努力してきた人々の思いをも踏みにじり、築き上げてきたアジアの人々との友情と信頼を著しく傷つけるものとなりました。

以上の理由により、私たちは今回の小泉純一郎首相による靖国参拝に強く抗議します。