2005年11月1日
内閣総理大臣 小泉純一郎 様
厚生労働大臣 川崎 二郎 様

日本カトリック正義と平和協議会
事務局長 長澤正隆

韓国ソロクト・台湾楽生院訴訟判決に対する声明

私たち日本カトリック正義と平和協議会は、人間の尊厳、人権,非暴力による平和が踏みにじられることのない、世界を目指した取り組みをしています。

本日10月25日、東京地裁は、韓国ソロクト・台湾楽生院訴訟に対して、驚くような判決を下しました。2001年5月11日、熊本地裁は、ハンセン病者にたいし行政、国会の「不作為による責任」を認めました。また重大な人権侵害があったことを明確にし、国に賠償を命じ「ハンセン病補償法」が成立しました。そのことで、過去に一度でも日本の国立ハンセン病療養所等に入所した人は、国からの補償を受けられることになったのです。

補償の対象は、日本が統治していた地域のすべての患者におよぶことが、熊本地裁判決とハンセン病補償法の主旨です。そこで日本統治時代に、韓国のソロクトにある更生園や台湾の楽生院に隔離された人々も、日本政府に対して同様の補償を求めました。
驚くべきことに、厚生労働省はそれを拒否したのです。このことは、法の平等に反する不当なことであり、新たな差別のはじまりであります。

厚生労働省の結論の後、更生園と楽生院の入所者とが、補償を求めて東京地裁に訴訟を起こしました。行政訴訟とはいえ、事実上は日本の植民地支配の責任を問う裁判でもありました。
そして、今回台湾の原告勝訴となり、韓国の原告は敗訴という結果となりました。理由のいかんに問わず、これは、厚生労働省が実態調査をしてこなかったにすぎません。被告たちは、植民地時代にハンセン病の施設において過酷な扱い、差別を受けてきたのは事実であります。
法の解釈の違いからも、このような判決をくだすのは法治国家として、植民地時代と向き合ったときには本当に恥ずかしい思いがこみ上げてきます。

この判決において、台湾原告の判決は当然のものであると同時に、実質的に日本の植民地支配に対する責任を認めたという点で意義深いものです。
ハンセン病補償法の前文には、「悔悟と反省の念」を掲げています。原告たちの多くは高齢です。国は、本判決を尊重し控訴することなく早急に補償を実施してください。
又、韓国原告にはこれほど「悔悟の念」が残る判決はありません。私たち日本カトリック正義と平和協議会は、この判決に不満を表し抗議の声明を表します。

私たちは、私たちの社会から差別・偏見を取り除く働きのひとつでもあり、高齢の原告のためにも、台湾の控訴を断念しハンセン病補償法に則っていただきたい。
又、韓国の原告には、かつての植民地のハンセン病回復者の人権が回復されることを改めて強く要望し、裁判の判決を批判すると同時に強く抗議します。